【運動能力・発達とコオーディネーション】運動神経を高めるポイント

【運動能力・発達とコオーディネーション】運動神経を高めるポイント

現在、子ども達の運動能力が低下していると大きく問題視されています。
時代の背景と共に生活様式が変わり、便利な物がたくさん世の中には溢れています。
子ども達の運動能力が低下している原因にはいくつかあげられると思います。

1つは運動不足によるもの。

これは誰もがわかる事だと思います。
なぜ運動不足になったのかは色々な背景があり、一言では言い表せないのですが、社会的背景の影響が大きいのではないでしょうか。
社会的背景の影響が子どもたちの運動能力を低下させ、その結果どういった事が起きているのか
日本の現状をみていく必要があると思います。

  1. 日本の子ども達の現状
    子どもの運動器機能異常
    子ども達の骨折が多くなっている
    運動能力低下・子どもロコモとの関連性
    子ども達のバランス力と柔軟性の変化
    令和3年小・中学生スポーツテスト
  2. 運動スポーツと教育
    運動が好きになるコツ
    運動スポーツが持つ教育的意義
  3. 運動能力と発達
    運動発達の過程
    36の基礎運動
  4. 学習とコオーディネーショントレーニング
    学習のプロセス(脳が情報を処理する過程)
    コオーディネーショントレーニングの可能性
  5. 著者の紹介

日本の子ども達の現状

現在、日本では少子高齢化社会と言われ、子供の出生率が年々減少していることは皆さんご存じだと思います。
これからの日本では人口が減少していき、子供が少なくなると言う確実に起こりうる問題があります。

総務省の人口統計によると前年度と比べて約30万人減少しており、その中でも特に15歳未満人口は前年に比べ20万4千人の減少となり,割合は12.1%で過去最低となっています。

そんな子どもが少なくなっている中、ある問題が数年前から言われております。

それは… 子どもの運動器機能異常です。

子どもの運動器機能異常

運動器機能異常とは、病気ではないのですが、年齢とともに立ったり座ったり、歩くことがつらくなる状態を指しており、放っておくと要介護、寝たきりになる可能性があります。

そうこれは、高齢者を対象としたものだったのですが、近年この現象が子ども達の中で多くみられるようになったのです。

子どもたちの運動器の現状は、朝礼で立っていられない、物を投げる動作ができない、和式トイレが使えない、雑巾がけができない、転んだときに手を付けずに顔面を打ってしまうなど、基本動作のできていない子が急増しており、少し前の時代には考えられなかったことが起こってきています。

このことはスポーツをやっていない子ども達だけではありません。スポーツを行っている子ども達でさえ運動器機能異常はみられています。

子ども達の骨折が多くなっている

私自身、整形外科に10年以上勤めていたため骨折はよくみていたのですが、子ども達の骨折が最近多いなと感じていました。帯同しているチームでも骨折が多く、成長期だから多いのかなと気になって調べてみたところ…

独立行政法人日本スポーツ振興センターによる「学校の管理下の災害 -基本統計-」で、1970年度からの骨折発生率の推移をみると、小学校から高等学校で増加傾向、小学生未満では2000年度以降減少傾向。そして、全体では、2016年度には25年前の約1.4倍、40年までの2倍程度に増えているのです。

やはり増えてきてる…この背景にあるのは子どもの運動能力低下と子どもロコモが関係していると思います。

運動能力低下・子どもロコモとの関連性

骨折も色々の場合で起こると思いますが、外傷で骨折することは子どもの場合では少ないように感じます。ではどの場合で骨折が起こるかというと、

転倒とオーバーユースです。

転倒はバランスを崩しておこるものなのでバランス力が関与してきます。コオーディネーション能力の中にもバランス力は含まれています。子どもロコモチェックの中にも含まれていますが、これに該当する子どもが多くなっている事が事実としてあります。

オーバーユースに関しては、特定の部位のみを使い過ぎている事、小さいころから同じスポーツをしていると、競技特性もあるため同じ部位を使い過ぎる傾向にあります。

例えば野球だと右打ちの場合、体を左に捻ることが多くなり、サッカーでも利き足、バレーでもジャンプの踏み込みを考えると同じ部位を常に使わないといけないことになります。

このことは子どもロコモチェックにもありますが、柔軟性低下が関係してきます。

子ども達のバランス力と柔軟性の変化

バランス力はどのような変化をたどるかというと…
動的バランス(動きの中でバランスをとる力) → 静的バランス(状態を保つバランス力)の順に成熟していきます。

詳しくみると幼児の「動的バランス力」は2歳までには確立し、片脚立ち(静的バランス力)できるようになるのはその後3歳を過ぎてからで、6歳でようやく5秒の片脚立ちが可能となります。これが通常の成熟過程です。

学年別の変化をみると…
成長とともに未熟だった静的バランス力が確立し、片脚立ちができるようになりますが(とは言ってもできない子もいます)、逆に高学年になるにつれ柔軟性が低下し、しゃがみ込みや体前屈が困難になってます。

このことは成長期に多い疾患(Osgood、ジャンパー膝、Sever、Sinsplintなど筋肉や腱の付着部に起こる障害)には必ずと言っていいほど当てはまります。これは本当に多いです…
柔軟性に対して誰もがストレッチが大事だというのはここからも言えると思います。

令和3年小・中学校スポーツテスト

運動能力低下は実際にスポーツの部分でもその影響はみられており、令和3年に行われたスポーツテストの結果はコロナ禍でもあって小中学生の男女それぞれ昨年よ大きく減少しており、小学生男子においては計測を始めたH20年から過去最低の数値になっています。
このような事態が続くと日本のスポーツ界は非常に厳しい状況になることは誰もが予測できるでしょう。

令和3年小・中学校スポーツテスト

こういった結果になったのはいくつか考えられます。
コロナ禍で運動する機会が減ったというのは一番大きいと思いますが、これまでの子どもたちは、小さいころからかけっこなどで転んだりボール遊びをしたりして小さな怪我を繰り返すことで身のこなし方を学んできたのですが、現代の子どもは、PCやスマホといったデジタルデバイスに接する機会が多くなり、外遊びなどをすることが少なくなったことで、体の使い方を十分に身につけないまま育ってしまう事が考えられます。
(デジタルを否定するわけではありませんが、やはり何事もやり過ぎはいけないもので適度に行うもの)

運動スポーツと教育

運動が好きになるコツ

H22年の全国体力調査では体育の授業で「動きのコツがわかった」「運動やスポー ツがうまくできるようになった」「体育の授業は楽しい」という質問を児童生徒に対して行っています。

それによると、コツがわかったと答えた生徒はうまくできるようになったと多くが答えていて、うまくできるようになれば体育の授業が楽しくなることが分かります。また、 コツがわかった、授業が楽しい、と答える生徒の体力合計点が高いという結果が示されていました。

この結果は一見当たり前のように感じますが、運動やスポーツは子供たちにとって単なる身体活動ということだけでなくさまざまな意義を含んでいるという事が言えます。

中でも運動やスポーツには教育的意義を含んでいることはご存じだと思います。

運動スポーツが持つ教育的意義

子どもたちが動きのコツをつかめれば、できなかった運動ができるようになり、それを反復すればより上達し、体育・保健体育の授業、 運動やスポーツをすることが楽しくなる。

これを教育的意義を含んだ解説をすると、できなかった運動ができるようになる=自己肯定感、効力感「おれ、天才じゃん!笑」→さらに難しい課題に何度もチャレンジするようになりゴールを達成する=自発性、有能感が向上する。

こういったものは教育界では非認知スキル(自己肯定感や自尊心、コミュニケーション力や創造性など人生設計にも影響すると考えられている)と言われており、コンピテンス(発達心理学用語で有能感とも訳され、環境に対する適応能力をさす概念)とも言い換えられます。

このコンピテンスには自分の意思と行動で自分を取り巻くさまざまな事柄を変えることができ、その時に生まれる自己肯定感や効力感を含むものです。

簡単に言うと「おれ、天才じゃん!笑」です。そして向上心を生むことにもなります。

子どもが自ら進んで困難な運動やスポーツに取り組んで、そして達成する過程が重要であり、こういったコンピテンス(自己肯定感、自発性、有能感)を得る最善の教材が運動スポーツになります。

コオーディネーショントレーニングでは
子ども達が動きのコツをつかむための要素がたくさん含まれております。運動嫌いな子ども達、運動をあまりしない子ども達にもぜひとも『動作の巧みさ器用さ』を獲得しより多くの自己肯定感を感じて欲しいと思っております。

運動能力と発達

運動発達の過程

子供の運動能力低下においては、先ほどから申し上げているように、
今の時代背景が大きく関わっていると思っています。
一番は外遊びをする事が少なくなった事。現在の子ども達は忙しく、塾や習い事が多く、遊ぶ時間や遊ぶ場所、さらには遊ぶ相手も少なくなっているという事実が背景としてあります。

この遊びというものには、子どもが成長する過程で非常に多様な運動要素が含まれていて、遊びをたくさん行うことは、多様な運動経験をしていることになります。

小さい子ども達がサッカーや野球、バスケットなどをやっていきなりすごいシュートや、豪速球、スリーポイントが打てるかというと、そういう訳にはいきません。これは誰もがわかる事だと思います。
何事にも順序があります。

赤ちゃんが成長する過程の中で、首が座って → 寝返りができ → 座れるようになり → ハイハイができ → つかまり立ち → 歩く → 注視 → 手で遊ぶ → 玩具で遊ぶ → 人と遊ぶ というように発達の順序があります。
そうです。運動の発達にも順序というものが存在します。

それでは、運動発達について説明していきたいと思います。
まず、人は地球上にいる限り重力というものに常に戦っていないといけません。つまり人間が動く・活動するということは重力に拮抗した力を操作(コントロール)して体を動かすということになります。

赤ちゃんは生まれたら、まずこの重力をどうにかしないといけない状態になります。
最初の試練です。先ほどの赤ちゃんの成長過程を書きましたが、だいたい0~2歳で獲得します。

首が座って → 寝返りができ → 座れるようになり → ハイハイができ → つかまり立ち → 歩く → 注視 → 手で遊ぶ → 玩具で遊ぶ → 人と遊ぶ

これを運動技能に分類すると…平衡系・移動系・操作系の動作になります。
●平衡系(バランス)の動作:首のコントロール(首が座る)、転がる(寝返り)、座る、かがむ、立ち上がる
●移動系の動作:腹を地につけて這う・四つ這い(ハイハイ)、這い上がる、歩く、登る、降りる
●操作系(コントロール)の動作:手を伸ばす、つかむ、つまむ、はなす、投げる

つまり最初の段階では、体(姿勢)のバランスを維持し移動させるという初歩的な基礎運動を獲得することになるんですね。(姿勢に関する機能+重心に関する機能)

そして次の段階になるとより高度な運動を伴っていきます…
●平衡系(バランス)の動作:回る、組む、起きる片足で立つ、ぶら下がる、乗る、渡る、逆立ちをする、浮く
●移動系の動作:歩く、走る、スキップ、跳ぶ、よじ登る、くぐる、滑る、泳ぐ、這う
●操作系(コントロール)の動作:投げる、蹴る、打つ、突く、たたく、捕まえる、受ける、運ぶ、担ぐ、下ろす、押す、引く、漕ぐ、押さえる、積む、支える、振る、掘る

上記のような基本的運動の獲得をすることになります。これが2歳~7歳までで獲得します。

36の基礎運動

以上の運動をまとめると36の基礎運動というものが提唱されていて、以下の図になります。

36の基礎運動
36の基礎運動
36の基礎運動

図で見てもらうととわかると思うのですが、上2つの図は姿勢と重心に関する機能の運動。
3つ目の図は道具を使うような運動が中心です。

以上のことから何が言いたいかというと、

運動やスポーツは姿勢や重心などが目まぐるしく変わるものです。
基礎となる姿勢や重心をコントロールする機能が不十分だと、うまく身体を操作出来ずスポーツや運動を行えない。
姿勢と重心の運動が基礎として十分だと、細かい運動や四肢を巧みに使ってボールを蹴ったり、投げたり、
バットで打ったりができるという事です。

そうです。何事も順序なんです。

このベース(基礎運動)となる部分が十分でなければ、より高度な運動(スポーツ競技)はうまく行えず、時間がかかり、応用が利かなくなります。

なので成長期の段階までにはここのベースはしっかりと構築されている事が望ましいです。
構築されていなければ穴埋めをしてあげることが重要です。その穴埋めにこの基礎運動を伴ったコオーディネーショントレーニングを行うと、成長期が終わった成熟期へと発達のバトンがうまく渡せることになります。

子どもの運動発達の段階を知ることによって、その子が今どの段階なのか、何が足りないのか、何をしてあげたらよいのか、私たちにお手伝いできることが明確になります。

学習とコオーディネーショントレーニング

学習のプロセス:脳が情報を処理する過程

私達は生きている上で、物凄い数の情報の中で生活しているのは言うまでもないと思います。
ここで言う情報というのは五官(目・耳・鼻・舌・皮膚)から得られる全ての情報です。
その情報を脳がどういった過程で処理を行っているのか。

①感覚→②知覚→③認知→④行動

人はこの過程で情報を処理しています。

情報が入りその情報をどこでキャッチしたか(感覚)→その情報はまぶしいのか、うるさいのか、臭いのか、美味いのか、熱いのか(知覚)→知覚から得た情報は、どう感じるのか?嬉しい・楽しい・嫌い・好きetc(認知)→それによってどう行動するのか(行動)

で、最初の情報をどこでキャッチしたか?が重要と思っていまして、私たちもそうですが、最近は色んなものが便利になってきて、今となっては欠かせない代表的な物がスマホ・PCですよね。

今じゃ子ども達にも欠かせないものとなっています。これってどんな情報かというと主に目(視覚)です。
脳に入ってくる情報が目から得られるものだけだと経験・体験というプロセスが少なくなってしまうんです。
スマホやPCを否定するわけではありません。何事も偏りはいけないよねという事です。

コオーディネーショントレーニングではバリエーションを重要視します。
それはこういった脳の処理過程を理解した上で色んな刺激を受ける体験・経験が重要だからこそです。

コオーディネーショントレーニングの可能性

今の時代、便利な時代になり私もすごく助かっていますが、
その弊害というのが子ども達に皺寄せが来ているのかなと私は思います。

昔はそんな便利な物がないので、動いてどうにかしないといけなかった。

今は無いものが無い時代。

それが当たり前になり動くどころか考えることも少なくなった。

上記で脳の情報処理の過程について書きましたが、

『 五官(五感) → 知覚 → 認知 → 行動 』

五官を使って情報をキャッチし、その情報をどう感じるのか、
それはどう思うのか、それに対してどう行動するのか。
上記が一連のプロセスになります。

このサイクルが周り続けることが学習と呼ばれるものです。
なので便利な時代になると、
この五官(五感)を使って情報を得るという体験や経験が少なくなり且つ偏りがでてきます。
そうすると偏った学習しかできなくなってきます。

時代は流れます。変化の時代と言われている現代に臨機応変に対応する能力、創造力(クリエイティブ)
が必須だと思います。

様々な情報(刺激)を様々な五官(五感)からキャッチすることで上記のプロセスをたくさん経験し、
その経験からコト、モノが作られる。

SINIC理論を提唱した、オムロン創業者の立石一真(熊本出身)は
「幼い日々に思う存分遊んでこそ、人脈は広がり、ロマンは育ち、
 そのこころの襞(ひだ)が創造力を生み出す基となる」と言っています。

これは存分に遊ぶと言うのは、たくさん五官(五感)を使う事と捉える事ができると思います。
遊ぶ場が少なくなった今は、こういった場所も大人が提供していかなくてはなりません。

コオーディネーショントレーニングもトレーニングではありますが、運動能力だけではなく、創造力を担う一つの要素ではないかと考えております。

子ども達はこれからの日本を背負って立つ人材であり、宝です。
子ども達の明るい未来へ、私達大人はそういった社会や文化を創造する必要があると思います。
少しでも子ども達の力になればと思い、微力ながら活動しております。

著者の紹介

吉井 清人

吉井 清人
MIRAI∞ 代表
理学療法士
SORRISO熊本 トレーナー
ライプチヒ大学公認 コオーディネーショントレーナー
問い合わせ等に対応可能な連絡先 bokaskjan@gmail.com