カオス(混沌)

2019.05.30

ライプチヒ講座の講義テーマには「モーターアプローチvsアクションアプローチ」があり、(運動)学習理論の、平たく言えばスキル習得の大きな流れを扱っています。

 

モーターは”原動”、アクションは”行動”と私は訳しているのですが… おおざっぱに言うと、前者については、あらゆる動作は運動プログラムとして脳に保存され(トップダウン)… 後者のばあいは、プログラムは存在しない(ボトムアップ:脳に無限に近い動作数を保存できるわけがない)という立場。

 

運動プログラム理論は私たちがよく理解していることですが、その一方でアクションアプローチという流れもあることを周知しておくことは無駄ではありません。その代表的な理論にカオス(混沌)があります。ここでは、たんなる混乱など秩序(システム)を乱す「悪者」を意味していません。あるシステム(動作)から別の新たなシステム(動作)へと変わるさいにはカオス(トレーニング刺激で乱される)を経過するということだと思います。

 

トレーニングは全て、刺激-適応-パフォーマンス向上として説明できます。情報系については刺激-調節-パフォーマンス向上となるようですが… カオスは、教授法(演繹法と帰納法)のうちの帰納法(試行錯誤が特徴)に相通じるものがあります。どちらが正しいのかということではなく、両アプローチから学べるものがありますし、かつ有益です。

 

以前紹介したガブリエル「世界は存在しない!」は、アクションアプローチの側に属すのでしょうか。(高橋)