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2019/09/07
コレスポ事務局の移転

南行徳そして行徳に事務局を構えて約20年以上を経過しました。
これまでは”都心”の喧騒にもめげず何とかやってきましたが、どうも生体が”静寂”を要求し始めたようです。
偶然にも、同じ千葉県の房総半島の先端に、狭いながらも海の眺めのよい部屋を見つけ、衝動的に決めてしまいました。静かな環境ですが、夏は子どもや学生たちの臨海学校やらスポーツ合宿の盛んなところでかなりのにぎわいで、民宿もかなりあります。登山やジョギングなどもできます。
なんだか”山奥”に引っ越すという感覚はなく、「体を動かせ!」というプレッシャーを与えてくれそうな環境です。
また、JR駅や道の駅(高速バスで都心や羽田空港へ約1時間半)も徒歩数分のところにあります。じつは、ここであれば、2020年のオリンピックで来日するドイツの知人や友人の中継地として役立つかもしれないということもあります。

1か月ほど前から断捨離していますが、身の回りのものが少なくなるに連れて心が軽くなるという”浮遊感”を堪能しています。当初は「終活」という気分でしたが、今は何だか「復活」という高揚感をもっています。

9月18日に引っ越します。新しい住所などは以下のとおり:

〒299-226 千葉県南房総市 市部171-1-1205
固定電話:0470-28-4838(10/2~)

以上ですが、18日から10月2日にかけて、メール送信などが滞ることも予想されるのでご了承ください。

その場合は、携帯(090-9207-9399)にお願いいたします。(高橋日出二)

2019/08/06
体操とマルチスポーツそして左打ち

渋野日向子プロ優勝 全英女子オープンゴルフ

 

渋野選手の母親が講師を務める「体操」教室に幼少から参加し、ソフトボール、ゴルフ、野球、「マルチスポーツ」を実践し、左右の身体バランスと左右の巧緻性の育成を考慮してゴルフは右打ち、ソフトボールは左打ち「両側性トレーニング」の実践。さらには、両親はハイレベルの元投擲選手(遺伝的なタレント性)、他のスポーツもおこなっていながら最終的に選んだ種目はゴルフ(適性診断)。渋野選手の優勝とドイツスポーツ科学のキーワードを結びつけながら、今回の優勝をお祝いしたいと思います。今後のさらなる活躍に期待しつつ、個人的には左打ち練習に注目していきます。(鈴木タケル)詳しい記事は、毎日新聞記事へ 写真引用

体操とマルチスポーツそして左打ち
2019/07/16
Positive ContagionによるPlacebo Effect

Positive Contagionとは肯定的伝染と訳せばよいのでしょうか。Placebo Effectとは、有名な偽薬効果のことです。

今回は、道具に関するプラセボ効果について興味深い研究を紹介しています。研究者の1人は、マックス・プランク研究所のメンバーですが、私たちが行くライプチヒにあるマックス・プランク研究所でななく、テュービンゲンというシュツットガルト南部の都市にある研究所らしいです。ライプチヒにあるライプチヒ大学も1409年設立と歴史がありますが、こちらの都市にも1477年設立のテュービンゲン大学があり大学都市として有名だそうです。以下ご覧ください(鈴木タケル)

書斎のゴルフ VOL10 道具の影響


Positive ContagionによるPlacebo Effect
2019/07/07
プレッシャー下でおこる現象

アンダーシューティング現象

 

 ゴルフのパッティングにおいて緊張はつきものです。特にカップインして当然と思いがちな短い距離でのパットでは緊張状態の下で精緻な作業を要求されます。その時に不安を感じることはゴルフをやったことがある人であれば実感したことがあると思います。ゴルフ種目ではなくても、サッカーのPKやバスケットボールのフリースローなど過度の不安と緊張状態において、普段は高い確率で成功しているシュートも重要な場面になればなるほど難しくなることは想像できます。その時に、普段の動作とは、どのような差異があるのか?今回はゴルフのパッティングで行われた研究を題材に説明しています。(鈴木タケル)

 

書斎のゴルフ エビデンスGOLF VOL9 「精神的要因」

プレッシャー下でおこる現象
2019/07/03
カオスの例;指運動鈴木さんのラグビーの話は興味深いですね。

カオスの例を示すものとして「指運動実験」(下図)がライプチヒでは引用されています。
左右ヒト指し指のパラレル動作がシンメトリー動作にシステム変換するという例です。
パラレルに動かそうとしても、その意図に反してシンメトリックになってしまう…

また、渡り鳥(カモなど)の群は、まるで互いに意思疎通しながらきれいな三角形の隊列を成して、トップを替わりながら飛翔します。
また、そこには指示命令を出す「ボス鳥」はいないようです。

それぞれが自律的に動いている… 

指運動実験

以上のことをスポーツトレーニング(運動学習)に関連付けるとどうでしょうか。

モーターアプローチ(演繹的かつトップダウンに類似すると思うのですが…)とアクションアプローチ(帰納的かつボトムアップに相通じる…)。
どちらが有効かは皆さん自身が判断することだと思います。

何だか目的や対象がないから無意味だと叱られそうですが、どちらも有効ですが、昔とは比較できないほど競技レベルが高度化している現在、指導者の資質の優劣は、いかに選手の自律性を誘発し誘導することに成功するかによって定まるのではないかと思うけど… 当然と言えば当然です。

じつに“重々無尽”(あらゆることが相互に無限の関係をもって一体化し、作用しあうこと=仏教の華厳経)ですね。
これは、「情報とエネルギーの一体性」にも通じる。

情報とエネルギーは相互に条件づけあって一体化している。

バランスとアンバランスは相互に条件づけあって一体化している。

そのような対峙の如何に応じて人は動き、そして速く走れるようになる。

成功と失敗も然り…

(高橋)
2019/06/16
スキルの左右差

右打ちと左打ちでの2m距離を目標に停止させるパッティング課題   (鈴木タケル)

 

私が旧東独スポーツ科学に興味を持ったきっかけは、ゴルフにおいて本来右打ちの人が左打ちの練習をしたときに現れる効果性を調べたことからでした。ゴルフはおろかその他のスポーツやトレーニングについても左右差(ラテラリティ)を扱っていることは少なく、様々なことを調べていました。その時に旧東独トレーニング方法の中に左右をとりいれた方法があることを知りました。また、東洋では弓道での左射法の有効性などまでも調べました。それから約10年経ち、様々な人の協力を得て、ゴルフの論文を出版することができました。ほんとうに様々な人にお世話になったのですが、その中の一人で実験に使用したパターマットの(パターマット工房PROゴルフショップ)井上様が私の論文を工房ブログで紹介してくれました。簡潔にまとめられてますので興味ある方は読んでください。「初心者とプロゴルファーの優勢側スタンスと非優勢側スタンスにおけるストローク距離誤差の比較」

英語版全文 A comparison of stroke distance error from dominant and non-dominant putting stance in professional and novice golfers

スキルの左右差
2019/06/11
セットとカオス モーターアプローチvsアクションアプローチ

ラグビー日本代表元H.Cエディー・ジョーンズ氏の戦術

 

 先日の、KOLESPO高橋さんの書いたカオス(混沌)ブログ記事を読んでふと思い浮かんだことを書いてみます。モーターアプローチとアクションアプローチには、関係ないのですが何か繋がることも感じます。カオス(混沌)と聞いて、私が真っ先に思い浮かんだことが冒頭の「セットとカオス」でした。これは、2015年エディー・ジョーンズ氏がラグビー日本代表を率いて南アフリカに歴史的大金星で勝利を収めた時の戦術です、正確には、「カオス・プラス」だったと思います。セットとは、セットプレーを指しスクラムやラインアウトなどボールが止まっている状態のことで、カオスとはグラウンドでボールが動いている状態を指すそうです。つまり、セットとはある程度の秩序に基づいてプレーが進むが、カオスとはボールが無秩序に動き予測がつかない状態にあることです。体格に勝る南アフリカはセットプレーでは日本よりも上であることを前もって分析していたジョーンズ氏は、カオスの時間を多く作ることで勝機を見い出したのです。ジョーンズ氏も凄いのですが、個人的にはラグビーのゲーム分析をセットとカオスに分けて時間割合でゲーム分析した最初の人に脱帽ですが・・・規則的に行うことで向上する能力もあるし、不規則的なことで向上する能力もある、という意味で何か繋がりを感じるのは私だけでしょうか?日本ラグビーフットボール協会公式ホームページ内のレポートに、ジョーンズ氏の記事が掲載され、コーチとしての学ぶ心構えについても書かれており参考になります。(鈴木タケル)

 

写真 公益社団法人日本ラグビーフットボール協会HPより

セットとカオス モーターアプローチvsアクションアプローチ
2019/05/31
【コレスポ図書館】更新しました。

「東独トレーニング学を読む!その4」を掲載しました。

前回は,A.Lehnert: 決定的な試合のための直前準備(UWV)を紹介した。
今回は,競技種目ごとの取り組みについての報告をみてみたいと思う。
注目したいところはディスカッションのテーマにどのような問題や課題意識が取り上げられているか,という点である。各論文のカテゴリーをみると,UWVの構造問題,負荷と休息の問題,トレーニングの組織の問題,UWVのなかでの試合の構成法,心理的UWVの問題,気候や気象への適応問題,が論議されている。
UWVにはじめて取り組む競技種目もあり,初発の問題意識がどのようなものであったかを知ることができる。
(以下リンク先に続く)

https://kolespo.net/library/

2019/05/30
カオス(混沌)

ライプチヒ講座の講義テーマには「モーターアプローチvsアクションアプローチ」があり、(運動)学習理論の、平たく言えばスキル習得の大きな流れを扱っています。

 

モーターは”原動”、アクションは”行動”と私は訳しているのですが… おおざっぱに言うと、前者については、あらゆる動作は運動プログラムとして脳に保存され(トップダウン)… 後者のばあいは、プログラムは存在しない(ボトムアップ:脳に無限に近い動作数を保存できるわけがない)という立場。

 

運動プログラム理論は私たちがよく理解していることですが、その一方でアクションアプローチという流れもあることを周知しておくことは無駄ではありません。その代表的な理論にカオス(混沌)があります。ここでは、たんなる混乱など秩序(システム)を乱す「悪者」を意味していません。あるシステム(動作)から別の新たなシステム(動作)へと変わるさいにはカオス(トレーニング刺激で乱される)を経過するということだと思います。

 

トレーニングは全て、刺激-適応-パフォーマンス向上として説明できます。情報系については刺激-調節-パフォーマンス向上となるようですが… カオスは、教授法(演繹法と帰納法)のうちの帰納法(試行錯誤が特徴)に相通じるものがあります。どちらが正しいのかということではなく、両アプローチから学べるものがありますし、かつ有益です。

 

以前紹介したガブリエル「世界は存在しない!」は、アクションアプローチの側に属すのでしょうか。(高橋)

 

2019/05/11
人間とシステム:静寂が叫んでいる

ふたたび、東京都心にいるマルクス・ガブリエルのことば(TV番組より):「パーフェクトだね…でも、人がシステムのための部品のように感じる。人とシステムが逆転している。”シンギュラリティ”(AIが人知を超える…未来学、カーツワイル)はすでに30年前に起きていた。ずっとテクノロジーが人間を使ってきた。…日本には2つのものが混ざりあっている。秩序の下にある静けさ、そしてクレイジーな混沌だ。表面は静けさを保っているが内心は穏やかじゃない。…こんなに素晴らしい文化や経済的・政治的な達成があるのに…でも間違いなく抑圧的だ。”悪”には2種類あるとシェリングが言った。トランプのような、構造を破壊する”混沌的な悪”…もうひとつ、”構造に宿る悪”もある。あまりにも完ぺきな秩序は悪なんだ。…あまりにも高い効率性の中では、人々は抑圧される。東京の電車内でも人々はスマホに逃げ込んでいた。効率性が自らを追いつめている、強制されてもいないのに自らそうしているね」。

スポーツ・トレーニングにおいても、システムがあります。ドイツにも、例えば長期育成システムとかトレーニング計画ガイドラインなど、じつに多くの”システム”があります。そして多くの場合、それをうまく使いこなしている。以前の投稿で述べた「テクニック」のように捉えているからだと思うのです。育成システムは、”ビッグデータ”を駆使して基準や標準を提示し、実際には非常に多くの指導者にとって役立つものです。しかしかれらの実践の中で現実(選手個人の状態)との乖離が生じてしまう。その原因は、”システム”は世界と同様に現実ではないからです。あまりにも個人差(個体差)があるからです。それでも、システムは現実的に機能しています。こうした矛盾に耐えることが優秀な指導者(職人)に必須事項ではないかと思うのです。

かなり前のことですが、ドイツのある指導者のことばが今でも忘れません。「鉄道列車の時刻表はそこに記載されている時刻に列車が発着することを知るためではなく、実際とどれくらい発着が食い違うかを知るためにある。われわれの仕事も同じこと。…そうした経験知を積み上げることが大事なんだ」。だからこそ、ライプチヒ学派の教科書タイトルは「トレーニング科学」だけではなく、「トレーニング論(経験知)-トレーニング科学(科学知)」と併記しているようです。その経緯は綿引さんが詳しくご存知です。(高橋記)