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2019/07/16
Positive ContagionによるPlacebo Effect

Positive Contagionとは肯定的伝染と訳せばよいのでしょうか。Placebo Effectとは、有名な偽薬効果のことです。

今回は、道具に関するプラセボ効果について興味深い研究を紹介しています。研究者の1人は、マックス・プランク研究所のメンバーですが、私たちが行くライプチヒにあるマックス・プランク研究所でななく、テュービンゲンというシュツットガルト南部の都市にある研究所らしいです。ライプチヒにあるライプチヒ大学も1409年設立と歴史がありますが、こちらの都市にも1477年設立のテュービンゲン大学があり大学都市として有名だそうです。以下ご覧ください(鈴木タケル)

書斎のゴルフ VOL10 道具の影響


Positive ContagionによるPlacebo Effect
2019/07/07
プレッシャー下でおこる現象

アンダーシューティング現象

 

 ゴルフのパッティングにおいて緊張はつきものです。特にカップインして当然と思いがちな短い距離でのパットでは緊張状態の下で精緻な作業を要求されます。その時に不安を感じることはゴルフをやったことがある人であれば実感したことがあると思います。ゴルフ種目ではなくても、サッカーのPKやバスケットボールのフリースローなど過度の不安と緊張状態において、普段は高い確率で成功しているシュートも重要な場面になればなるほど難しくなることは想像できます。その時に、普段の動作とは、どのような差異があるのか?今回はゴルフのパッティングで行われた研究を題材に説明しています。(鈴木タケル)

 

書斎のゴルフ エビデンスGOLF VOL9 「精神的要因」

プレッシャー下でおこる現象
2019/07/03
カオスの例;指運動鈴木さんのラグビーの話は興味深いですね。

カオスの例を示すものとして「指運動実験」(下図)がライプチヒでは引用されています。
左右ヒト指し指のパラレル動作がシンメトリー動作にシステム変換するという例です。
パラレルに動かそうとしても、その意図に反してシンメトリックになってしまう…

また、渡り鳥(カモなど)の群は、まるで互いに意思疎通しながらきれいな三角形の隊列を成して、トップを替わりながら飛翔します。
また、そこには指示命令を出す「ボス鳥」はいないようです。

それぞれが自律的に動いている… 

指運動実験

以上のことをスポーツトレーニング(運動学習)に関連付けるとどうでしょうか。

モーターアプローチ(演繹的かつトップダウンに類似すると思うのですが…)とアクションアプローチ(帰納的かつボトムアップに相通じる…)。
どちらが有効かは皆さん自身が判断することだと思います。

何だか目的や対象がないから無意味だと叱られそうですが、どちらも有効ですが、昔とは比較できないほど競技レベルが高度化している現在、指導者の資質の優劣は、いかに選手の自律性を誘発し誘導することに成功するかによって定まるのではないかと思うけど… 当然と言えば当然です。

じつに“重々無尽”(あらゆることが相互に無限の関係をもって一体化し、作用しあうこと=仏教の華厳経)ですね。
これは、「情報とエネルギーの一体性」にも通じる。

情報とエネルギーは相互に条件づけあって一体化している。

バランスとアンバランスは相互に条件づけあって一体化している。

そのような対峙の如何に応じて人は動き、そして速く走れるようになる。

成功と失敗も然り…

(高橋)
2019/06/16
スキルの左右差

右打ちと左打ちでの2m距離を目標に停止させるパッティング課題   (鈴木タケル)

 

私が旧東独スポーツ科学に興味を持ったきっかけは、ゴルフにおいて本来右打ちの人が左打ちの練習をしたときに現れる効果性を調べたことからでした。ゴルフはおろかその他のスポーツやトレーニングについても左右差(ラテラリティ)を扱っていることは少なく、様々なことを調べていました。その時に旧東独トレーニング方法の中に左右をとりいれた方法があることを知りました。また、東洋では弓道での左射法の有効性などまでも調べました。それから約10年経ち、様々な人の協力を得て、ゴルフの論文を出版することができました。ほんとうに様々な人にお世話になったのですが、その中の一人で実験に使用したパターマットの(パターマット工房PROゴルフショップ)井上様が私の論文を工房ブログで紹介してくれました。簡潔にまとめられてますので興味ある方は読んでください。「初心者とプロゴルファーの優勢側スタンスと非優勢側スタンスにおけるストローク距離誤差の比較」

英語版全文 A comparison of stroke distance error from dominant and non-dominant putting stance in professional and novice golfers

スキルの左右差
2019/06/11
セットとカオス モーターアプローチvsアクションアプローチ

ラグビー日本代表元H.Cエディー・ジョーンズ氏の戦術

 

 先日の、KOLESPO高橋さんの書いたカオス(混沌)ブログ記事を読んでふと思い浮かんだことを書いてみます。モーターアプローチとアクションアプローチには、関係ないのですが何か繋がることも感じます。カオス(混沌)と聞いて、私が真っ先に思い浮かんだことが冒頭の「セットとカオス」でした。これは、2015年エディー・ジョーンズ氏がラグビー日本代表を率いて南アフリカに歴史的大金星で勝利を収めた時の戦術です、正確には、「カオス・プラス」だったと思います。セットとは、セットプレーを指しスクラムやラインアウトなどボールが止まっている状態のことで、カオスとはグラウンドでボールが動いている状態を指すそうです。つまり、セットとはある程度の秩序に基づいてプレーが進むが、カオスとはボールが無秩序に動き予測がつかない状態にあることです。体格に勝る南アフリカはセットプレーでは日本よりも上であることを前もって分析していたジョーンズ氏は、カオスの時間を多く作ることで勝機を見い出したのです。ジョーンズ氏も凄いのですが、個人的にはラグビーのゲーム分析をセットとカオスに分けて時間割合でゲーム分析した最初の人に脱帽ですが・・・規則的に行うことで向上する能力もあるし、不規則的なことで向上する能力もある、という意味で何か繋がりを感じるのは私だけでしょうか?日本ラグビーフットボール協会公式ホームページ内のレポートに、ジョーンズ氏の記事が掲載され、コーチとしての学ぶ心構えについても書かれており参考になります。(鈴木タケル)

 

写真 公益社団法人日本ラグビーフットボール協会HPより

セットとカオス モーターアプローチvsアクションアプローチ
2019/05/31
【コレスポ図書館】更新しました。

「東独トレーニング学を読む!その4」を掲載しました。

前回は,A.Lehnert: 決定的な試合のための直前準備(UWV)を紹介した。
今回は,競技種目ごとの取り組みについての報告をみてみたいと思う。
注目したいところはディスカッションのテーマにどのような問題や課題意識が取り上げられているか,という点である。各論文のカテゴリーをみると,UWVの構造問題,負荷と休息の問題,トレーニングの組織の問題,UWVのなかでの試合の構成法,心理的UWVの問題,気候や気象への適応問題,が論議されている。
UWVにはじめて取り組む競技種目もあり,初発の問題意識がどのようなものであったかを知ることができる。
(以下リンク先に続く)

https://kolespo.net/library/

2019/05/30
カオス(混沌)

ライプチヒ講座の講義テーマには「モーターアプローチvsアクションアプローチ」があり、(運動)学習理論の、平たく言えばスキル習得の大きな流れを扱っています。

 

モーターは”原動”、アクションは”行動”と私は訳しているのですが… おおざっぱに言うと、前者については、あらゆる動作は運動プログラムとして脳に保存され(トップダウン)… 後者のばあいは、プログラムは存在しない(ボトムアップ:脳に無限に近い動作数を保存できるわけがない)という立場。

 

運動プログラム理論は私たちがよく理解していることですが、その一方でアクションアプローチという流れもあることを周知しておくことは無駄ではありません。その代表的な理論にカオス(混沌)があります。ここでは、たんなる混乱など秩序(システム)を乱す「悪者」を意味していません。あるシステム(動作)から別の新たなシステム(動作)へと変わるさいにはカオス(トレーニング刺激で乱される)を経過するということだと思います。

 

トレーニングは全て、刺激-適応-パフォーマンス向上として説明できます。情報系については刺激-調節-パフォーマンス向上となるようですが… カオスは、教授法(演繹法と帰納法)のうちの帰納法(試行錯誤が特徴)に相通じるものがあります。どちらが正しいのかということではなく、両アプローチから学べるものがありますし、かつ有益です。

 

以前紹介したガブリエル「世界は存在しない!」は、アクションアプローチの側に属すのでしょうか。(高橋)

 

2019/05/11
人間とシステム:静寂が叫んでいる

ふたたび、東京都心にいるマルクス・ガブリエルのことば(TV番組より):「パーフェクトだね…でも、人がシステムのための部品のように感じる。人とシステムが逆転している。”シンギュラリティ”(AIが人知を超える…未来学、カーツワイル)はすでに30年前に起きていた。ずっとテクノロジーが人間を使ってきた。…日本には2つのものが混ざりあっている。秩序の下にある静けさ、そしてクレイジーな混沌だ。表面は静けさを保っているが内心は穏やかじゃない。…こんなに素晴らしい文化や経済的・政治的な達成があるのに…でも間違いなく抑圧的だ。”悪”には2種類あるとシェリングが言った。トランプのような、構造を破壊する”混沌的な悪”…もうひとつ、”構造に宿る悪”もある。あまりにも完ぺきな秩序は悪なんだ。…あまりにも高い効率性の中では、人々は抑圧される。東京の電車内でも人々はスマホに逃げ込んでいた。効率性が自らを追いつめている、強制されてもいないのに自らそうしているね」。

スポーツ・トレーニングにおいても、システムがあります。ドイツにも、例えば長期育成システムとかトレーニング計画ガイドラインなど、じつに多くの”システム”があります。そして多くの場合、それをうまく使いこなしている。以前の投稿で述べた「テクニック」のように捉えているからだと思うのです。育成システムは、”ビッグデータ”を駆使して基準や標準を提示し、実際には非常に多くの指導者にとって役立つものです。しかしかれらの実践の中で現実(選手個人の状態)との乖離が生じてしまう。その原因は、”システム”は世界と同様に現実ではないからです。あまりにも個人差(個体差)があるからです。それでも、システムは現実的に機能しています。こうした矛盾に耐えることが優秀な指導者(職人)に必須事項ではないかと思うのです。

かなり前のことですが、ドイツのある指導者のことばが今でも忘れません。「鉄道列車の時刻表はそこに記載されている時刻に列車が発着することを知るためではなく、実際とどれくらい発着が食い違うかを知るためにある。われわれの仕事も同じこと。…そうした経験知を積み上げることが大事なんだ」。だからこそ、ライプチヒ学派の教科書タイトルは「トレーニング科学」だけではなく、「トレーニング論(経験知)-トレーニング科学(科学知)」と併記しているようです。その経緯は綿引さんが詳しくご存知です。(高橋記)

2019/04/24
ドイツの”見えない皇帝”

マルクス・ガブリエル(哲学界の”ロックスター”、ドイツ人)の言葉がどうも気になるので続けて紹介しましょう(TV番組より)。

石黒教授(大阪大。ヒューマノイド=人間型ロボット開発)の研究室にて…
人間とロボット(AI:人工知能)の境界はなくなるか? 
「そうはならないし、試すことすらすべきではないと思う。なぜなら、私たちの倫理的価値の土台は進化上の祖先にあるからです。”私たちは猿だ” というのが倫理の源です」。
技術の進歩が人間性を損なう? 
「そうではない。人間性はその度合いが減ったりするようなものではない。人間性とはすなわち動物であるということです。人間という種は本質的に10万年間は変わっていない。だが、動物であることは変わらなくとも、技術によって私たちの自己像は変わる。技術の進歩への適応は自己認識を変えてしまう。つまり、ロボットを通して自分たちを理解するようになった、それが私たちの倫理と行動様式をを変えてしまうのです」。
このヒューマノイドという概念について、ドイツ人は他の欧州諸国と違い、理解できないように思うが? 
「やはり、ロボットには心が無いように感じる。ドイツ憲法の最初は、”人間の尊厳は不可侵である”(カント)と唱っています。ドイツの暗い過去の経験から導かれています…ドイツには”見えない皇帝”がいます。哲学がドイツの”見えない皇帝”なのです」。

別の訪問先にて…もし、世界がないなら、どのように合意形成する? 
「まさに”全体”がないからこそ、重なり合いが成立する。たとえば細胞について考えてみると、細胞もまた”意味の場”ですが、細胞には一定の遊び、自由があります。そうした細胞たちが重なり合って新しい構造体を変化することができる、なぜなら、細胞同士の動きを上から統合するものなどなく、そして融合を阻むものもない。全ての構造はローカルなものです。だから何も問題なく重なり合うことができる…私の考えは西田幾多郎(1870-1945)に近いという人がいます…”動物から人間に進化したといっても、人間は動物でなくなったのではない。…そして人間は絶対矛盾的自己同一に面する”」。

とりあえず以上紹介しましたが、動作学・トレーニング学にも相通ずるものがあるような気がするのです。
ライプチヒ講座で扱われている学習理論テーマ「モーターアプローチvsアクションアプローチ」はとくに関連していると思うのですが…。
皆さんからの投稿で、補足などしていただければ嬉しいのですが…。

お願いします!

(高橋)

2019/04/26
なぜ、練習を重ねても上達を実感できないのか?

ゴルフは、学習曲線を理解するのに最も優れたスポーツ!!

 

様々なスキル習得において、上達する過程は山あり谷ありです。頭では理解していることですが、ゴルフほど山あり谷ありを実感できることはありません。ゴルフをすると、身体的、技術的、精神的にもできないことへの耐性を磨くことができますし、モチベーションの維持方法、対処方法を身をもって学ぶことができます。運動指導に携わる方には、是非体験して欲しい種目です。恥ずかしながら学習曲線の知識を知ったのは、ゴルフのプロとしての技術を身に付けた後でした。しかしながら、ドイツでのライプチヒ講座では、スポーツギムナジウム(エリートスポーツ専門学校)に通う、中学生、高校生が使う教科書「初歩の動作学-トレーニング学」に学習曲線について記載されていることを知りました。まだ、これから上達の過程を進む早い段階で、これから待ち受けるプラトーやスランプを前もって理解させるあたりにドイツらしさを感じたことを覚えています。(鈴木タケル)

この記事の詳しい解説はこちら 書斎のゴルフ エビデンスGolf Vol2 

エビデンスGolf

 

 

ライプチヒスポーツギムナジウム正門

画像に含まれている可能性があるもの:植物、屋外

 

 

 

 

 

なぜ、練習を重ねても上達を実感できないのか?